第二回 友冨由紀さん (留学エージェント代表)

/ 2010年3月21日/ カナダで活躍する日本人


カナダで活躍する日本人、第2回目は1999年設立、トロントの日系留学エージェントの老舗であるEducation Primeの代表、友冨由紀さんにお話を伺いました。


QLS : そもそもYukiさんはどうして自分でビジネスを始めようと思われたのですか?

Yuki : 話がちょっと長くなるんですが、私が語学留学でトロントに初めて来たのが1994年。インターネットも普及しておらず、限られた情報の中、1年目はあらゆるトラブルに巻き込まれたんですよね。(笑)まずトロント空港からホームステイ先に向かおうと、右往左往して最寄駅まで到着したものの、学校から連絡を受けていたこの「最寄り駅」が間違っていてですね、重いスーツケース2つを抱え、だんだん暗くなってくるし、運悪く降り出した雨の中、やっとの思いでステイ先にたどり着いたのを覚えています。が、そこで待っていたのは来る日も来る日も同じサンドイッチとコーンフレークだけの食事。ある日ステイ先の子供と話していたら、ホストマザーに突然怒られたんです。ブロークンな英語で話しかけないでって。これには落ち込みましたね。このままここに居たら栄養失調にもなりかねないと思い、友人のつてで1ヶ月後、別のホームステイ先に移りました。ところが、今度はその新しいホストファミリーに3ヶ月分の滞在費を先払いした翌日に夜逃げされてしまったんです。(苦笑)鍵もない、食べる物もない、しかもそのお家は売りに出されていることにも気づき・・・。翌日学校の校長先生に話をしに行ったのですが、「学校の紹介」を受けずに勝手にホームステイ先にいることを逆に咎められ、支払った家賃に関しても、「領収書ももらっていないあなたが悪い」と言われ、頼る人もおらず、あの時はさすがに呆然としました。といって悲しんでいる暇もないので、まずは住む所を確保しなければ!と、当時同じ滞在先にいた他の生徒さん達を代表して皆の滞在先手配や学校への交渉など始めたんです。フリーペーパーを片手に朝から晩まであちこち回りました。最終的に部屋を貸してもらえた時の嬉しさは今でも忘れられません。夜逃げされたステイ先の件では後日談があって、前払いしていた家賃をずっと返してもらえず、やっと送られてきた小切手が不渡りになるなど、その後警察や銀行へも何度足を運んだ事かわかりません。1年の留学を終えて一旦帰国する頃にはトロントが嫌いになってしまう程だったのですが(笑)、あれだけ夢に描いてきた海外生活をこんな思いで終わらせてしまうのはどうにも納得がいかず、ワーホリでまた同じトロントへすぐに戻ってきました。1年目に色々経験したからなのか、ワーホリ生活は非常にスムーズで、「トロントってこんなに住みやすい街だったんだ」と思えるようになったんです。日本とは違い、何ヶ国語も話せる人があちこちに居て、様々な文化背景を持つ人達から受ける影響はとても新鮮でした。周りの目に捕らわれない自由な空気と、個性を精一杯引き出してくれるここトロントに今度は魅了されてしまったんですね。その後苦労しながらも無事永住権を手にすることになるのですが、その後は本当に色々な職種を経験しました。でも、正直どれもピンと来るものがなかったんです。ある時留学エージェントとの出会いがあり、そこで私が経験してきたことが100%活かせる仕事であることを実感したんです。新しくトロントに来る人たちに、私と同じような辛い目には絶対遭って欲しくないと。そして、自分で納得のいく運営をしてみたいと思ったのがそもそものきっかけだったと思います。

QLS : YukiIさんにはもともと起業願望というのはあったんでしょうか。

Yuki : 日本にいた頃からとにかく働く事は好きでしたね。ただ正社員として働きだしてからは、日本では当時まだ年功序列、女性に対する待遇の差別も濃く残っていて、いわゆる会社の歯車となっていることには日々疑問を感じていました。起業願望まではありませんでしたが、自分で何かやってみたいという希望、またその下積みのようなものは自然とやってきたように思います。

QLS : 起業当初は御苦労もあったと思いますが。

Yuki : 初めてトロントに来た時のゴチャゴチャがあまりにも強烈だったので、起業してからは苦労と言うほどの苦労もせずここまで来てしまった感じです。(笑)最初は机一つとPC一台、一人でポツンとした仕事場でしたが、同じビルの語学学校の生徒さんがちょくちょくお友達を連れてオフィスに遊びに来てくれていたんですね。最初は本当に雑談をしてただけなんですけど(笑)、そこから口コミであちこちから問題を抱えた生徒さんが相談に来るようになり、オフィスが人で溢れかえるようになってきたんです。一人ではとても対応できなくなってしまい、スタッフの雇用を始め、オフィスも広げていきました。3年目には全く別分野で活躍していた主人を説得して会社を辞めてもらうまでに至り、その後も口コミの勢いは衰えず、日本国内のエージェントとのネットワークも数珠つながりに広がっていきました。あらゆる面でのタイミングもあったと思いますが、私は本当にラッキーでした。

QLS : その頃からあまり広告宣伝をせずに事業を伸ばされてきたわけですね。

Yuki : 基本的に広告であれこれ宣伝するのは好きじゃないんです。とにかくサービスのクオリティーを守ることが最優先ですね。自分で自信を持ってサポートできないことには手を出さないし、自分で誇りを持って精一杯の仕事をしたいという気持ちが強いですね。

QLS : 留学ビジネスをやっていく上での“ツボ”みたいなものはあるんでしょうか。

Yuki : とにかく大切なのはハートですね。お金にこだわっていたらとてもできる仕事じゃないです。自分のエネルギーを人に与える仕事なので、相手以上に自分自身がいつもハッピーでなきゃって思いますね。あと、私の場合、母の言葉にはいつも支えられてきているんですよね。小さい頃からいつも「上には上がいる!人にできて自分にできないことはないと思え」といって育てられて来た事もあり、自分の事で手一杯になって立ち止まっている暇はなく、しんどい時、つらい時も、私よりがんばっている人はいっぱいいる!と母の声を思い出していつも乗り越えているので、そうやって育ててくれた母には本当に感謝です。

QLS : 最後に今後カナダで起業しようとする人たちへのメッセージをお願いします。

Yuki : まずは現地でのネットワークを広げる。人とのつながりを大切にしながら幅広く様々な仕事にチャレンジして、自分の好きな仕事を見つけて欲しいですね。その仕事から自分がどれだけパワーをもらえるか。その仕事から得られる満足度が高ければ高いほど、その方面のビジネスで成功できる可能性も高いと思います。