第一回 柿原武治さん(日本食レストラン経営)

/ 2009年5月26日/ カナダで活躍する日本人


カナダで活躍する日本人、第一回目は、USとの国境に近い町 Fort Erieで日本食レストラン、YUKIGUNI II(660 Garrison Rd. at Thompson Road., Fort Erie, Ontario)を経営する柿原武治さんをご紹介します。


自分が毎日料理を作っているきっかけは少年の頃までさかのぼる。それは母が作る料理がマズイ!ということだ。食べ物を残すことは許されず涙しながら食べたものである。一方、父と姉はそれをうまいと言っているのだ。ある日少年は決心した。自分で作ろう!当然簡単な物しかできない。おにぎりや卵焼き、しかし母のそれよりは上出来だった。うまくできれば人に食わせたいもので家族にも味を聞いてみると反応は良かった。「おいしい!」と言われると素直にうれしい。

やがて高校生になるとすぐにバイトを始めた。もちろん飲食店である。しかし、たかが学生のバイト、自分の作りたい料理を作れるわけがない。決められた単純作業である。いつか自分の考えた料理でお客を喜ばせたいという飲食店経営の夢をもった。

そして親の反対を押し切って調理師学校に入学したのだがすぐに親が反対した意味を理解した。日本の人口に対して料理を作る仕事の人が多すぎるのだ。フランチャイズ店が莫大に増えアルバイト店員でも賄えるシステムを完成させ、コンビニの弁当のクオリティーもアップした。価格戦争の勃発である。一部の最高級店を除く個人店舗は大打撃をうけ、調理師の必要性はうすくなっていった。

そんな中、一枚の広告が目にとまった。 “豪華客船世界一周ツアー“まさにこれだ!調理師の中でも専門職に就けばよいのである。こうして海外就職への道はスタートしたのだが、身内や友人に自分の考えを話しても、なかなか理解してもらえず “変わり者”あつかいされた。たしかに変わり者でなければ日本に居るだろう。

そういうわけで若干20歳、なれない英語環境での生活が始まったのだが、当然数え切れないほどの失敗談もある。しかしチャンスは2年後にやってきた。勤めていた日本料理店が2軒目を出店することになったのだ。調理担当の職場仲間はチャイニーズと日本人のワーキングホリデーのアルバイトしかおらず、調理師免許を持っている自分は良いポジションに着くことができた。これはまさに海外生活のメリットである。日本と比べ人材が不足しているので、日本人を必要とする職種では優位に立てる。逆に日本人を特に必要としない職種では語学の分、不利になるだろうから頭に入れておいてほしい。しかし十分な英語能力があればどんな仕事でも重宝されるだろう。たとえば不動産業であればカナダ人のお客を同等にこなし尚かつカナダ在住の日本人のお客は日本語で話せる人に依頼する可能性は高い。

そこで5年程勤め、その間人並み以上の努力と経営の勉強はしたと自信を持って言える。27歳で独立、いよいよ飲食店経営が始まった。当然ながら不安でいっぱいだった。が、以外と順調に行くのである。日本と大きく違う点は、競争相手がフランチャイズ店や高級店または老舗ではなく、自分と似たような形態なのだ。すなわち価格競争をせず小資本で特別なハイスキルがなくとも太刀打ちでき個人レベルの努力で成功させることが可能である。

多くのライバルがいる中で活躍するには多大な努力、才能そして運が必要だが小さいコミュニティーでは比較的容易ではないだろうか。あくまでも“比較的“ということを忘れないでほしい。

日本にいる頃、ただ海外生活をしてみたいという動機でこっちに来てしまうと目的を達成してしまい、そこから先を見失ってしまう。しかしカナダで何をしたいのかという目標を明確にできれば、日本に居るよりも成功する確率はあがると思います。