第十一回 川嶋亮さん(ウィスラー・ヘリスキー会社勤務)

/ 2014年3月2日/ カナダで活躍する日本人


カナダで活躍する日本人、第十一回目は2007年以来アルバータ州のキャンモアとブリティッシュ・コロンビア州のウィスラーを拠点に夏はハイキングガイド、冬はスノーボードインストラクターやヘリスキー会社で活躍する川嶋亮さんにお話をうかがいました。川嶋さんは個人ブログmellow lifeでもカナダディアンロッキーやユーコンの大自然の魅力を紹介されています。


QLS: 今回インタビュー前に改めてブログを拝見したんですが、川嶋さんの写真はどれも力強く訴えるものがあって、つい引き込まれてしまいますね。その場にいるような錯覚に陥ります。

川嶋: ありがとうございます。7年前に一眼レフを購入して以来ツアーに出たときなどに気に入った場所を撮り始めたんですが、今では相当な量になっています。キャンモアにはアーティストのための発表会があって、そこに出展したり販売もできますが、写真はあくまで趣味なんです。

QLS: 趣味をここまで極めるのは本当に凄いと思います。ではまず、カナダに来られたいきさつですが、カナダの前はスイス、その前はUSにも住んでいらっしゃったんですね。

川嶋: 父親の仕事の都合で中学2年からオレゴン州に住んでいて、その後、NYの寮制の高校を卒業して日本に一旦帰りました。大学卒業後1年間は会社勤めをしていたのですが、また海外の自分の知らない世界を見たいと思い、会社をやめて半年くらいバックパッカーとしてヨーロッパを計15カ国程まわりました。ヨーロッパの中でも特にスイスアルプスの壮大なスケール感に魅了され、しばらくここに住んで地元の人の暮らしぶりを体験したいと思い、スイスアルプスのウェンゲンという小さな村でホテルの住込みボランティアを始めました。ここではハイジに出てくるような屋根裏部屋に住んでいました(笑)。次の年には、偶然ツェルマットの山専門の旅行会社が日本語のハイキングガイドを募集していたので応募し、結局計5年間スイスに住むことになりました。オフタイムではスノーボードや登山を存分に楽しみ、この時国際スノーボードインストラクターの資格もとりました。

その後はビザの関係もあって、一旦日本に戻ったのですが、これからの進路を模索していたところ、やはり山のある所に行きたいと思い漠然とニュージーランドかカナダに行こうと考えました。この時アルバータ州・キャンモアにあるヤムナスカマウンテンツアーズの3カ月の登山学校プログラムというのを見つけ、カナディアンロッキーへの興味と山の技術向上のために申し込みをしました。そのプログラムはロッククライミング、アイスクライミング、アルパインクライミング、山スキーの技術習得、それに野外救急法などとても充実していてたくさんのことを学びました。卒業後は縁もあり、ヤムナスカマウンテンツアーズ でハイキングガイドとして働くようになり、それがこうして今ここカナダに住むきっかけとなりました。

QLS: カナダに移ってからはどんな生活をされていましたか。

川嶋: 夏はキャンモアを拠点にカナディアンロッキーやユーコンでハイキングガイド、冬はウィスラーでスノーボードインストラクターやゲレンデ内のガイドをしてきました。昨年冬に初めてユーコン準州のホワイトホースでオーロラガイドも体験しました。基本的にアウトドアが好きなので、これまで仕事の話があればどこにでも行くとういう感じで身軽に移動していました。あと、5月と11月はシーズンオフになるので趣味の写真やクライミングにも存分に時間を使うことができました。自分ではこのライフスタイルをとても気に入っていたのですが、ただシングルの時はこれでも良かったのですが、今は家族ができてなるべく家族と一緒に過ごしたいので、これからどうやって暮らしていくか、最近はよく妻と家族会議をやっています(笑)。この冬からは拠点をウィスラーに移していますが、しばらくここに落ち着くことになりそうです。

QLS: 奥様も無事ランディングを完了して良かったですね。現在の仕事の醍醐味は何ですか。

川嶋: とにかく自分自身旅が好きなので、色々なところに行ってその土地の文化、歴史、暮らしぶりを自分の目で見て体験することの素晴らしさを伝えたいと思っています。ガイドという仕事を通して、お客様をカナダの山々の手つかずの自然に案内し、お客様とそのかけがえのない時間、場所を共有できるのは最高です。カナダの大自然の素晴らしさをたくさんの人に伝えたいという思いがあって、これからも仕事としてのガイドと趣味の写真を通して、カナディアンロッキーや周辺の山々の魅力を多くの人に知ってもらうことが自分の役目だと思っています。あと、高校時代から趣味で始めたスノーボードですが、毎年自分のインストラクションを受けるために遠方から来られる常連のお客様もいて、そういうお客様との出会いもまた楽しみの一つです。

QLS: そういえばブログの中にも毎年トロント近郊から来られるご家族の記事がありましたね。逆に仕事上の苦労はありますか。

川嶋: 基本的に旅行関係の仕事なのでお客様に合わせて夏の4-5カ月と冬の4-5カ月集中して働くことになります。これはこれでシーズンオフは趣味に打ち込むこともできて自分にとって理想的なライフスタイルなのですが、自分の好きなことを仕事にすることと、ファイナンシャル面での安定のバランスをうまくとっていくことが課題です。それでもなんとかなるものです(笑)。

QLS: 川嶋さんは色々な国を旅し、今ここに落ち着いたわけですが、カナダの魅力は何だと思いますか。

川嶋: 一言でいうと、自分の夢を実現しやすい場所じゃないかと思います。何事も自分しだいで自分のやりたいことにどんどんチャレンレンジできるというか・・もちろん外国人としてのハンデはあるけれど、自分のやりたいことがあれば、それを助けてくれる人も沢山いて、移民を受け入れる環境がどの国よりも整っていると思います。色々な国に行って感じたことですが、カナダほど差別がなくて、誰でも、どこの国から来た人でも平等に扱ってくれる国は他になかなかないと思います。

QLS: 色々な国を経験されてきただけに説得力がありますね。最後にこれからカナダを含めて海外を目指す人にメッセージをお願いします。

川嶋: 私自身は日本での社会人としての生活はたった一年だったので全てを見たわけではないですが、ひとつ言えるのは、自分はたまたま日本で生まれたにすぎないのであって、日本人というより地球人という見方をすれば、人それぞれ自分に合う場所があると思うんです。日本人だから日本に居なきゃいけないということは全然なくて、住みたいところがあればそこに移って暮らしてみてもいいんじゃないかと思います。そのための第一歩として、情報を集めてみて興味があったら勇気を出してまず行ってみる、現場に身を置いて自分の目でみて吸収し、肌で感じ、体験してみることが大切だと思います。自分自身、世界を見ることで価値観も変わったし、逆に日本のいいところも見えるようになりました。これまでわからなかったことが達観できるようになったと思います。世界を旅してその土地の人と接すると、世の中にはこんな生活があったのか、こんな働き方があったのか、こんなライフスタイルがあったのかと、色々なものが見えてきます。その中で、自分が一体どうなりたいのかと考えて、自分の理想のライフスタイルを送っている人をみつけたら、自分にもできないだろうか、どうしたらそういうライフスタイルを送れるだろうか、と考えて行動してくと、いつかその理想の形に近づけるんじゃないかと思います。

QLS: 実体験に裏付けられた力強いメッセージありがとうございます。ご家族そろって今年も元気で過ごされること、また、新天地でのあらたなご活躍をお祈りしております。今日はお休みのところありがとうございました。